産経新聞 夕刊 EVENING MAGAZINE 7面 「融合は私の永遠のテーマ」


「今」を彩るショップが立ち並ぶ横浜・元町の「元町商店街」そこから道を一本入ったマンションの一室に、デザイナー稲葉みちよさんのアトリエがある。元町という土地は、いかにも流行を作り出す立場の若手デザイナーにふさわしい選択だ。 稲葉さんは、自身のショーで「パソコンをおしゃれに持つ専用のバッグ」「携帯電話が入るブーツ」「パソコンを身に付けるためのサスペンダーバッグ」といった作品を立て続けに発表した。すべて「デジタル機器のため、ウエアラブルのためのファッションだ」

「デジタルとアナログの融合は、私の永遠のテーマ」と語る稲葉さん。デジタルとはコンピューター、アナログとはファッションを指す。その原点は十代のころの“ゲーマー”体験。インベーダーゲームにはまり、デザイナーとして独立する前にはゲームソフトメーカーに勤務していた。

「そんな世代の私にとって、ファッションの中にウエアラブル機器が入るのは、とても自然なこと。パソコンメーカーがファッションと機械を切り離して考えている方が不思議です」と語る。稲葉さんによると、流行の発信源である若い女性は、パソコンにしても携帯電話にしても、もっともっと「かわいく、おしゃれで、軽く、持ちやすいもの」を求めているという。

そんな顧客の声に接する機会の多い稲葉さんは「携帯電話は、なぜ四角で硬くて耳に当てて使わなければならないのか分からない」テレビだって、丸くてふわふわしていて、リモコンで操れば自分の所までコロコロ転がってきてもいいのに、とも。
携帯電話は耳に当てるもの、テレビは四角いものという認識から改めなければならないらしい? 売り手は買い手のニーズを理解しきれていないのだ。例えば、パソコンの心臓部をピアスの形にして、音声認識で操り、画像を見るのはサングラス上のディスプレーにする。ピアスの中に入りきらない機能や音声だけでは動かせない機能は、ペンダントや腕時計の形にしてしまう。そんな“ウエアラブルパソコン”があってもいい。

「私が考える究極のウエアラブル機器はアクセサリー。 機械だ、と思わせてはだめなんです」と稲葉さん。今のところ自身の作品は 「ウエアラブル機器をファッション」にとどまっているが、「ぜひパソコンや携帯電話のメーカーと協力して、小さくてかわいい、アクセサリーと変わらないウエアラブル機器を開発したい。自分のファッションの雰囲気を壊さず、バッグから取り出す手間もいらないウエアラブル機器がいいですね。今の日本のメーカーならば技術的には問題ない」

あとはデザイナーなどファッション業界の関係者に機械のデザインをさせてみようという、発想と勇気が必要なだけだという。