日経トレンディ 7月号 P.212 What’s Ahead?
21世紀流行序説 デジタル世代が起こすデザインの新風
「コンピューターが刺激するデザイナーの発想」新世代デザイナーにとって、デジタル機器はいまや完全に・ツール・。意識の中に、機械はエンジニア、服はデザイナーという従来の枠組みはなく、代わりに全方向への興味が当たり前のこととして存在する。
96年に東京コレクションでデビューした稲葉みちよは、10代の時にインベーダーゲームとDCブランドの両ブームを経験した、自ら認める・コンピューター第一世代・。ファッション専門学校を卒業後、ゲームソフトメーカーにも勤務し、ファッションとコンピューターという、ふたつの領域に並行してかかわってきた。「ファッション界は、いまだに手作業の比重が大きい職人的な世界。デジタル技術を毛嫌いする傾向も見受けられるのですが、コンピューターには人間の脳を越える機能があるのだから、それを使わない手はない。一方でコンピューター界も、オタクのイメージを脱してファッショナブルになってきている。そんなアナログとデジタル、ふたつの世界をまとめることがデザイナーの役割だと思っています」
その稲葉が99年春夏で発表した「ギルティ」は、ゲームのキャラクター用にデザインしたもの。ゲーム機ソフトメーカーのサミーは、同コレクションをもとに今年発売の業務用ゲームキャラクターの衣装を制作したが、このような共同作業はファッション業界でも初めての試みだった。
稲葉は現在、ゲームソフトそのものの開発にも携わる。今年4月には、東芝とタイアップして同社製のノート型パソコン「ダイナブック」用のバッグもデザインした。「映画や音楽に加えて、コンピューターもデザインの大きな源。私たちはそういう世代なんです」
ゲーム、キャラクター、アニメ、フィギュア、CG・・・・・。稲葉の活動の中には、きわめて今日的な日本産業の断片がちりばめられている。それらのモチーフをリアルタイムに取り込み、かつアウトプットする身軽さは、販売の方法論が硬直しがちな大手企業や、すでに権威となってしまった大御所デザイナーにはないものだ。

