産経新聞 26面「ナノテク生地で電磁波をカット~元町のデザイナー協力、商品化へ~」



 人体への影響が心配されている電磁波の防止に高い性能を示す生地が誕生、ファッション業界との連携で商品化も間近だ。川崎市のベンチャー企業が、ナノテクノロジー(超微細技術)を駆使して開発。外出着、作業着、エプロン・・・どう活用するかがポイントといえる。横浜・元町のデザイナーが今秋の東京コレクションでナノテク生地を使ったスタイルを提案。ナノテク・ドレスで新素材のアピールに協力する。

 この「電磁波シールド布」を開発したのは、日本電波吸収体(川崎市高津区)。企業支援施設、かながわサイエンスパーク(KSP)に入居する創業三年のベンチャー企業だ。四十五平方メートルの部屋と四人の社員が同社のすべて。高速道路の自動料金収受システム(ETC)の誤作動を防ぐ電磁波吸収装置などを開発、販売している。
荻野哲社長は「暮らしの中で役立ちたいという思いがあった」と生活分野に意欲をみせる。
ポリエステルに特殊な金属をコーティング。糸の表面を五十ナノメートル(一ナノは十億分の一)という極小の粒子が覆う。八百~三千メガヘルツの高周波の電磁波を通さない新素材。携帯電話、電子レンジが出す電磁波に対応する。
荻野社長は、完成した生地を横浜市中区にあるファッションデザイナー、稲葉みちよさんのブティックに届けた。十一月の東京コレクションに出品する稲葉さんの作品に使ってもらうためだ。銀色でつやのある生地に「タフタ(薄い絹織物)に似た感触。スカート、ブラウス、ドレスにもできそう。」と稲葉さん。硬めの生地はエプロン、作業着などに向きそうだ。
一年前、この生地は厚さ一ミリ程度の金属板だった。シールドシートとして裏面に隠し、エプロンにする計画だった。今春、商品化直前まで話が進んだが、「ショーでは面白いけど、実用性ではどうかしら」と稲葉さん。薄くて軽いとはいっても、エプロンとしては違和感があった。しゃがんだり立ったり、動きに対する柔軟性にも問題があった。
荻野社長は「金属アレルギーの人もいるので表面の加工に試験と研究を重ねた」と、開発の苦労を振り返る。
ただ、IH調理器などから出る低周波を防ぐには、さらに金属の密度をあげる必要があり、研究を重ねていくという。
これまで宇宙開発や医療など専門分野の特殊技術だったナノテクが、化粧品や家電製品、機能性健康食品など暮らしの中の身近な商品で実用化が進んでいる。ナノテクの応用範囲は広く、小さなベンチャー企業にも技術力で大きなビジネスをつかむチャンスが広がっている。